TOP活動実績2006

(2) 時空間等価電流双極子推定法によるRDS両眼立体視の脳内処理部位の解析
  知能と情報(日本知能情報ファジィ学会誌),Vol.18,No.1,pp.102-110,2006-2

ヒトが物体の奥行きを認知する時,重要な手がかりの一つが両眼視差である.著者らは,先行研究において,ランダムドットステレオグラム(以下RDS)(大,小,ゼロの視差)観察時の脳波を計測し,等価電流双極子推定(ECDL)法を用いて,RDSによる立体視における脳内処理部位を推定した.その結果,(1)立体視の視覚情報処理に中心後回が関係していること,(2)立体視の後,脳波が収束することを発見し,その潜時がRDSの視差が大きい程遅れること,を確認した.
本研究では,上記(1),(2)に着目し,奥行き認知における脳内処理過程を,中心後回に至るまでの過程と中心後回から先の過程に分け,異なる視差のRDS観察時の脳内処理部位とその時間推移を比較した.被験者は液晶シャッター眼鏡および電極キャップを装着し,被験者が液晶シャッター眼鏡を通してRDSを観察する際の脳波を計測した.特に,小視差と視差無し,大視差と視差無しの差分波形に注目し,視差を有する視覚刺激に対する脳内処理の特徴的な潜時を推測した.
小視差および大視差RDSに対するEEG加算平均データにECDL法を適用した結果,中心後回以前での視覚情報処理過程は2つの経路で行われたと推測した.一つはV1からV4,そしてTE野への経路である.もう一方はV1からMT野,そして中心後回への経路である.この推定結果は視差の違いに関わらず同様の傾向がみられた.次に中心後回より後での脳内処理部位では眼球運動に関係している前頭眼野および上丘にECDが推定された.さらにその後,前頭眼野に推定されてから脳波が収束するまでの間では,下前頭回および中前頭回にECDが推定された.RDSの視差が大きい場合には,小さい視差に比べて,より早く上丘および前頭眼野にECDが推定されたが,脳波の収束潜時は遅れ,また収束直前に下前頭回にECDが推定されるまでの潜時も長くなっていた.
PREVIOUS << >> NEXT