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(32) 簡易形状モデルを用いた有限要素法による調音運動/ei/の筋活動の検討

高野佐代子, 松崎博季, 元木邦俊, ライナー・ウィルヘルム-トリカリコ
日本音響学会春季研究発表会, pp.253-254, 2007-3


 筋肉の集合体である舌は筋活動によって部分的な組織の圧縮と膨張を生じて変形運動を行い,音声生成において重要な役割を果たす声道を適切に作り出す.人間を模擬する音声生成モデルを構築するには,機能的および形態的な観点から舌内部の変形を詳細に調べた上で舌の変形メカニズムをモデル化する必要がある.筋電計測による研究では,母音/i/発声時には舌の中央部を扇状に走るオトガイ舌筋全体の強い活動が見られ,舌根部を前方に引き寄せると同時に,舌上面に溝を形成しつつ前上方に押し上げる機構が考えられてきた.この仮説に対し,舌を粘弾性連続体と仮定した有限要素法を用いたシミュレーションによって,母音/i/の生成メカニズムとして外舌筋の関与が確認されている.一方で,組織の内部変形が計測可能なタギングMRI(tagged-MRI)法を用いて調べた結果,母音/i/の発声時には舌前方表面付近での上方移動に加え,同部位でのより早い時刻での運動開始,高速度の変形および正中方向への圧縮が見られ,従来の外舌筋機構に加えて内舌筋(特に舌内部を左右方向に走る横舌筋)の関与が示唆されている.本報告では上記タギングMRIの結果に基づいて舌を簡易形状でモデル化し,内舌筋の活動による舌変形メカニズムを有限要素法シミュレーションを用いて確認し,母音/i/の生成メカニズムについて再検討する.

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