(37) 古蝋管からの画像工学的音声再生
魚住純,前田尚範,吉田拓馬
北海学園大学大学院工学研究科紀要工学研究,
10, pp.23-32, 2010-9
音を録音し再生する実用的な装置としての初めての蓄音機である蝋管は,音楽や
口述の録音が比較的簡便にできることから広く普及し,音楽家らが自らの演奏を録音
したり,言語学者が少数民族などの言語音声を録音するなど,研究目的にも多く使わ
れた.そのため,貴重な音声資料として現存するものも多いが,蝋管自体が貴重な
文化財であることから蓄音機による再生が認められない場合や,割れや欠損などによ
り針による再生自体が不可能となっているものも多い.本研究は,音溝画像のディジ
タル処理による音声再生法を古蝋管に適用することにより,蝋管の粗面状態やほ
こり等によって発生するスペックルノイズの影響を回避し,より良好な音質の音声を
再生する方法を開発することを目的としている.本論文では,照射条件,照射光源,
画像処理法等について検討を行った結果,この方法による音声再生についての原理的
な可能性を確認したので報告する.