報セキュリティ技術の一つである電子透かし技術は,最近,インターネットなどで配信される音楽や画像データなどのディジタルコンテンツの保護技術として暗号技術や認証技術とともに関心を集めています。そのなかで電子透かし技術は,特にディジタルコンテンツの不正コピーを防止し,著作権保護に役立てる目的で利用価値が高まっています。電子透かし技術とは,画像で言うと,「透かし情報」を人が検知できないようにデジタル画像に埋め込む技術です。そして,必要に応じて透かし情報を読みとり,その身元証明として利用する技術です。たとえば,所有者(作成者)Aの画像データをBに使用許可を与えたことを透かし情報として埋め込むことによって,他のものの不正コピーによる使用が看破できます。このようにして,不正コピーの原本の所有者を識別できます。
研究では,ディジタル画像データにホログラフィの技術を用いて,透かし情報を埋め込む新しい電子透かし法を研究しました。本来,ホログラフィは光波の干渉技術を用いて対象物体からの光波の振幅と位相の情報を干渉縞の形で記録し,その後,物体像を完全に再生する光学技術です。物体が拡散物体であるときには,物体からでる光波の波面は複雑なランダム波面ですから,記録媒体であるホログラムにはランダムな干渉縞が高密度に記録されます。 つまりホログラムには,物体形状がそのまま記録されているわけではなく,ランダムで一様に分布する干渉縞に物体の情報が完全な形で記録されているのです。
干渉のホログラフィの技術は,従来からの光学に基づくものです。そして,この研究では,デジタルコンテンツのホログラフィをコンピュータによって実現しています。 このように,kの研究は,光学理論と情報科学を融合した新しい技術分野の位置を占めています。




ディジタルホログラムが加わった画像(上)とそれから再生された電子透かし情報。ホログラム成分の重みによって再生像は変化する。

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