の研究では,3ステップ法の位相シフト干渉法において,検査物体の表面が,一般には,粗面であることを考慮してそれが結果に与える影響を調べました.特に,手法自体が基本的に位相のラッピングを伴うことを説明し,そのアンラッピングによる位相接続のアルゴリズムを記述するとともに,計算機によるいくつかのシミュレーションを提示しています.
 具体的な実験としては,2種類の計算機シミュレーションを行っています.一つは,物体表面の微視的でランダムな位相量を変化させ,位相接続に及ぼす影響を調べました.これによって,ランダム位相の標準偏差が0.4π程度の場合には位相接続が達成されることが明らかになりました.つまり,標準偏差値で波長の1/5程度以内の位相揺らぎを与える粗面に対して干渉計測ができることになります.
う一つは,結像におけるフィルタリングの影響を調べました.つまり,結像レンズのサイズを,種々の表面粗さに関して変えてアンラッピングの成否を調べました.この結果,極度にレンズを絞り込むと,正しい物体像(実際には位相分布の像)が得られないことによるエラーが生じます.一方,フィルタサイズを大きくして像の解像度を上げると,同時にスペックル雑音が顕著になり,干渉強度分布が微細でランダムな構造になります.その結果,アンラッピングの際の位相接続に失敗することになります.このようにフィルタリングに関しては,適度なフィルタリングでなければならないことを定量的に明らかにしました.




ランダム位相の標準偏差0.4πに対する物体上の位相分布(上)と算出された位相分布(下).下段の左は,wrapped(折りたたまれた)位相分布,右は結果のunwrapped位相分布.画像サイズは256×256,フィルタサイズは32×32.

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