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(57) 時間領域の3次元有限要素法による母音の合成
    北海学園大学工学部研究報告, 第30号, pp.83-98, 2003/2/20

 時間領域の3次元有限要素法により,3次元声道形状モデルを用いて母音の合成を試みる.声道形状の簡単化と合成母音の品質の関連性を調べるため,2種類の声道形状モデルに対してシミュレーションを行う.1つは声道形状をそのままモデル化したオリジナル形状モデルで,もう1つは声道横断面をだ円で簡単化しただ円近似モデルである. 声道形状モデル作成には,成人男性1話者の5母音発声時の磁気共鳴画像より得られたデータを用いる.音源として,Rosenbergの音源モデルを基に作成した音源と, 自然性を考慮してゆらぎを持つと思われる実音声から推定された音源を使用する.本稿の実験では,3次元の放射を模擬するための放射空間の境界条件として空気の特性インピーダンスを使用する.この仮定の妥当性について検討する.オリジナル形状モデルとだ円近似モデルの合成母音を複数の被験者に聴き比べてもらった結果は以下の通りであった.Rosenbergの音源モデルが音源として使用された場合,母音/u/に対しては,ほとんどの被験者が両者の合成音に差異を感じた.しかしながら,他の母音に対しては,差異を感じた被験者は僅かであった.自然性に関しては,推定された音源が,3 kHz以下の周波数成分しか含んでいないにもかからわず,Rosenbergの音源モデルよりも効果があることが示された.
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