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(6) 奥行き認知と痴呆との関連についてII
  工学研究 (北海学園大学大学院工学研究科紀要), 第3号, pp.111-117, 2003-9

 高齢化社会に伴い痴呆患者の増大が大きな社会問題になっている.痴呆疾患にはその成因によって早期に治療にとりかかれば効果が期待できることから,早期診断が予後に重要な意味をもってくる.痴呆の多くはアルツハイマー病であると言われている.近年増加傾向のアルツハイマー病において早期診断はこうした点からも重要であるにもかかわらず,客観的非侵襲性の簡易な検査診断法がない状況にある.
 著者らは,立体視に関して液晶シャッター眼鏡を用いた仮想空間の奥行き知覚を計測し,頭頂葉での反応を認めた.この部位はアルツハイマー病の患者の初期障害部位と一致している.この事実をもとに,アルツハイマー病において初期から出現する視空間認知機能の障害で奥行き知覚が低下していることに着目し,奥行き知覚を簡易に計測することで早期診断の検査法の確立を目指した.
 これまでに正常な視覚を有する健常者とアルツハイマー病患者との奥行き認知の度合いについての実験及び評価を行い,20〜22歳の健常者とアルツハイマー病患者との奥行き認知距離を基準とした判別分析で95.28%の判別率,また60〜78歳の健常者とアルツハイマー病患者とでは76.48%の判別率を得ている[9].
本研究ではこの結果をもとに,より被験者の負担が少なく判別率の高い検査方法及び評価方法についての検討を行った.

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