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(14) 視差の異なるランダムドットステレオグラム視覚刺激に対する脳内処理部位とその過程の比較検討
   生体医工学シンポジウム2004, 2004-9

 我々が奥行きを認知するときに,最も重要な手がかりの一つが両眼視差である.先行研究において著者らの一部は被験者がランダムドットステレオグラム(以下RDS)を観察している際の脳波を計測し,等価電流双極子推定(ECDL)法を用いてヒトの立体視の視覚処理に中心後回が関係していることを示した.そして,全被験者の平均の脳波から全ての脳波が収束する潜時を発見し,その潜時がRDSの視差が大きくなるに従って遅れることを確認した.本研究では,我々はRDS視覚刺激に対するヒトの視覚処理の脳活動を推定し,被験者が異なる視差のRDSを観察する際の脳活動を比較した.我々は小視差,大視差,視差無しの3つの両眼視差のRDSを用意した.被験者は液晶シャッター眼鏡および電極キャップを装着し,RDSを提示された際の脳波を計測した.我々は特に小視差と視差無し,大視差と視差無しの差分を求めた.ECDL法の結果から,中心後回以前での視覚処理は複数の経路であると推測した.一つはV1からV4,そしてTE野への経路である.もう一方はV1からMT野,そして中心後回への経路である.中心後回より後では,眼球運動に関係している前頭眼野および上丘にECDが推定された.さらにその後,前頭眼野に推定されてから脳波が収束するまでの間では,下前頭回および中前頭回にECDが推定された.RDSの視差が大きくなるに従って,前頭眼野にECDが推定された潜時は早期になったが,脳波の収束する直前に下前頭回にECDが推定された潜時は遅れた.

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