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(41) 単語概念の深層格選好に基づく深層格推測手法
   電子情報通信学会論文誌D,Vol.J89-D,No.6,pp.1413-1428,2006-6

 本論文では,構文解析済みの単文に対して深層格を推測する手法を提案する.推測に用いる知識は,網羅性とコストの問題に対処するため,一定量のタグ付きコーパスから得られた知識を中核として,タグなしコーパスから規則として学習する.本手法は,単語の概念ごとに,それぞれ特定の深層格に解釈される傾向(深層格選好)が存在するという仮定に基づき,一定量のタグ付きコーパスから深層格選好を計算した後,その値を用いてタグなしコーパスから多様な言語表現に対処するための規則を学習する.深層格選好を手がかりの主体とすることにより,本手法は言語の違いに依存せずに深層格を推測することが可能となる.言語非依存性を検討するため,日本語と英語のEDRコーパスを用いて,一つの動詞と二つの名詞で構成される単文を対象に実験を行った.その結果,クローズドデータにおける日本語の精度81.2%(再現率78.0%),英語の精度78.5%(再現率77.8%),オープンデータにおける日本語の精度69.5%(再現率62.1%),英語の精度73.5%(再現率73.3%)となり,従来手法と同程度の精度で日本語と英語の深層格を推測することができた.

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