TOP活動実績2006年研究成果概要


[研究グループ構成]
   研究者  :元木邦俊,桃内佳雄,越前谷博,松崎博季
   共同研究者:荒木健治(北大),笹岡久行(旭川高専)
   研究支援スタッフ:(PD)渋木英潔  

[研究課題と成果概要]

@[ 声道モデルの高度化による音声生成機構の物理音響的特徴解析(元木邦俊・松崎博季) ]
 音声生成系の物理的形状と伝達特性の対応関係を表現可能とする高度な声道モデルの開発を目標に研究を行っている.昨年度までに収集した母音発声MRIデータを用いて声道の3次元モデルを構成し音響解析を進めている.口腔と鼻腔の結合,梨状窩や喉頭蓋谷のような微小な窪みや分岐の存在,声道の柔らかい壁の影響などについて検討した.窪みや分岐の影響として話者が異なっても伝達特性上に共通して現れる特徴として,付加的なピークや零,あるいはそれらの対を生じさせること,梨状窩および喉頭蓋谷がほとんど他の部位と干渉することなくほぼ独立して第1 から第3 ホルマントを移動させることが示された.声道内部を無損失とした場合に現れる帯域幅の極めて狭い多数のピークと零は,壁インピーダンスにより柔らかい壁を与えた場合にはほとんど現れないことが分り,3次元モデルにおける境界条件設定の重要性が明らかとなった.また,声道の動的変形をシミュレートする基礎として,慣性項を考慮した連続粘弾性体により構成される舌の簡単な形状モデルを用いて,筋活動による舌変形をシミュレーションした.これらの成果は電子情報通信学会,日本音響学会等で発表されている.

A[ 知識と文脈情報の融合処理へ向けての言語情報処理の高度化と知的言語処理システムへの応用(桃内佳雄・渋木英潔) ]
 アイヌ語・日本語機械翻訳システムのための知識と文脈情報の融合的・漸進的な処理方式に関する研究の中で,多義語の処理とその実現方法について考察を進めた.アイヌ語地名解析に関する研究では,2005年度に作成したアイヌ語地名解析システムを基礎として,アイヌ語山川名の検索と解析のための辞書の構築を行い,アイヌ語山川名検索・解析システムの試作を行った.アイヌ語学習入門システムからの展開として,アイヌ文化学習入門システムの構築についても検討を進め,衣服を中心とするアイヌ文化学習入門システムの試作を行った. 言語情報処理の高度化に関わる研究では,ゼロ代名詞解析のためのCENTERアルゴリズムに関する実証的な考察を行い,問題点を整理して,新たな解析モデルの提案を行っている.また,深層格推測手法の研究では,深層格推測のための知識整備において,特定の言語に依存しない深層格選好という考え方に基づき人手による労力の軽減を目指した.その結果,従来手法と同程度の精度を保持したまま,日本語と英語を対象に同程度の精度で推測することができた.また,動詞の多義性による深層格推測への影響を回避するために,動詞の直前の名詞を参照することで多義性の解消を試みた.そのための二分依存関係という知識表現形式を提案した.

B [ 学習機能を有する知的言語処理システムの研究(越前谷博) ]
 近年,インターネットの普及に伴い,異言語で記述された情報に触れる機会が増大している.その結果,数多くの機械翻訳システムの開発が行われるようになった.それと同時に機械翻訳システムの性能を効率よく評価する必要性が生じている.このような状況において,近年,機械翻訳システムの性能評価を自動的に行うための研究が活発に行われている.  その代表的なアプローチとして,参照訳を用いて翻訳結果を自動評価する研究がある.このアプローチでは,参照訳だけを用意することで特定の言語に依存することなく様々な言語に適用可能であるという利点を持つ.しかし,これまでに提案されている自動評価手法は,単語訳の評価には優れているが語順の制約を反映していないものや,その逆に,語順の制約は反映されているが,単語訳には不十分なものなど一長一短があり,問題点が残されている.そこで,本研究では,人間の生得的能力の観点より,文字列間の共通部分を一意に決定する,再帰比較手法を提案し,それを機械翻訳結果の自動評価に適用する.その結果,語順の制約と単語訳の正確性をともに満たす機械翻訳自動評価が期待できる.





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