TOP活動実績2006年研究成果概要

 

[研究グループ構成]

          研究者:山ノ井高洋,高井信勝,魚住純,大西真一
       共同研究者:菅野道夫(同志社大),村上新治(札幌医大),
               市橋秀友(大阪府立大),林勲(関西大),高柳浩((株)情報科学センター),
               豊島恒((株)情報科学センター,本学博士後期課程),
               山崎敏正(NEC),小山隆正(松下電器東京研究所)
               吉田香織(札幌総合医療専門学校),池田望(札幌医大),
               鈴木光弘(札幌医大博士後期課程),竹田里江(札幌医大)
               朝倉利光(北海学園大),岩井俊昭(北大電子科研)
               原田康浩(北見工大),相津佳永(室工大),
               中村隆(釧路高専),櫻田安志(釧路高専)
   研究支援スタッフ:(PD)豊島恒,(RA)船水英希

[研究課題と成果概要]

@[ ヒトの視覚情報処理・言語情報処理における脳内部位の推定と脳の知的システムの解析(山ノ井高洋・大西真一・豊島恒)]
 ヒト視覚刺激の情報処理過程を時空間的な把握が,本研究遂行の過程で可能となった. A.向きを表す単語(漢字:上,下,左,右)と記号(矢印:↑,↓,←,→)に対する時空間的脳活動に関しては,漢字矢印ともに向きが逆の刺激に対しては,右下前頭回に推定された双極子の向きが逆となることが明らかになった.このことからEEGのブレイン・マシーン・インターフェース利用の可能性を検討しつつある. B.日本語の敬語表現の脳内処理部位については,観念構成的意味を表す書き言葉の文(D文)とこれを敬語に直した文(P文)を視覚提示し,その脳内処理を時空間的に比較した.この結果,両者の処理に明らかな経路の違いが認められた.特に,P文の処理の場合に,新脳とよばれる大脳皮質のみならず,旧脳に属する扁桃核での反応が明らかとなった.この部位は,驚きや恐怖に対して反応すると言われている部位であることは興味深い. C.加算結果に対する正解選択時と近似計算時の時空間的脳活動に関しては,経路の差が明らかとなったが,近似計算時には,正解選択時と比べ,右脳の頭頂葉を用いていることが顕著であった. D.立体視処理の脳内処理部位については,V1からTEにいたるまでの処理と並行し,MT野から中心後回の処理がなされていること,さらにこの際の時空間的処理の経路を確認し,特に,大きな視差の場合には小さな視差よりも早い潜時で各部位の処理が行なわれていることが明らかとなった. 向きを表す単語と記号および立体視処理に共通して,空間認知のワーキングメモリとされる右下前頭回〜右中前頭回に双極子が推定されていることが確認された.この部位には加算結果に対する近似計算時にも双極子が推定されていることから,曖昧な判断は空間的な処理を行っている可能性がある.また,敬語表現の脳内処理過程においても同様の部位に双極子が推定されたことから,場面を想像する際など,空間的な要素に関係する様々な処理を行っている可能性がある.

A[ 光学情報処理と画像情報処理の融合化とその知的光計測技術への応用(高井信勝) ]
 2006年度は,非整数次微分フィルタの特性とそれを用いる微分演算の画像処理を研究した.画像解析において微分演算は,エッジや境界の検出に用いられる.とりわけ画像強度の最大点・最小点のような勾配の検出によるものには1次微分,変曲点のような領域の境界検出にはラプラシアン演算子に代表される2次微分が用いられている. 本研究では,通常の整数次微分を拡張して,フーリエ空間で非整数次微分を定義し,そこで定義される非整数次の微分フィルタの特性を調べることによって,非整数の微分次数が小さいほど高周波数成分が抑制され,高周波性の雑音が問題になる微分処理に適する特性を持つことを示した.また,非整数次微分を人物や建物のような一般の画像に用い,通常の1次微分と同様にエッジ,つまり領域の境界が強調されることを示した.しかし,その現れ方は微分次数に依存しており,エッジは整数次の1の場合よりも非整数次の微分によって,少なくとも視覚的にはよい結果が得られることを示した.  このように,本研究を通して,画像処理において整数次微分を拡張した非整数次微分を適用し,新規的な画像計測を可能にする手法を提案した.

B[ 機能性光波による光・画像情報処理の高度化と知的光計測技術への応用(魚住純・船水英希) ]
 機能性光波による光情報処理に関わる研究においては,昨年度に引き続き,液晶SLMを用いて高強度のフラクタルスペックルを生成するシステムを構築し,フラクタル次元を介して空間相関特性を容易に制御できる長相関フラクタル散乱場の生成法を確立した.また,フラクタルスペックル場の位相特異点について,計算機シミュレーションによる解析を進め,特異点の空間分布がマルチフラクタル特性を示すことを示した.画像情報処理に関する研究においては,LPレコードの音声再生システムに高解像度CCDを導入してシステムの精度向上を図るとともに,知的再生システムの構築を目的とした再生システムの自動化のためのソフトウェア開発を進めた.また,一般化微分法および一般化絶対微分法による分光スペクトルデータのPLS回帰分析の解析精度を高め,最適計測パラメータを自動的に決定する知的分光計測システムへの基礎的知見を得た.また,これらの拡張微分法による新しい画像処理法の開発を目的として,一般化微分処理および一般化絶対微分処理による画像解析特性に関する基礎的知見を得た.

 



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