ニュース電子情報工学科

掲載日:2023.07.25

北海学園大学工学部の藤原英樹教授、北海道大学電子科学研究所のクリストフ・パン助教、平井健二准教授、雲林院宏教授、慶應義塾大学理工学部の海住英生教授の研究グループの共同研究成果がアメリカ化学会誌ACS Applied Nano Materialsに掲載されました。なお、本成果の一部は、本学電子情報工学科卒業生の弥勒院達紀君、大黒谷清吾君の卒業研究プログラムの成果を使用しています。

タイトル:
Site-Specific Synthesis of Conductive Graphitic Nanomaterials on a NiFe Thin Film by Localized Laser Irradiation

著者:
Hideki Fujiwara, Seigo Daikokuya, Tatsuki Mirokuin, Kyohei Hayashi, Mizuki Matsuzaka, Yuri Ohashi, Christophe Pin, Hideo Kaiju, Kenji Hirai, Hiroshi Uji-i

掲載サイト:
https://doi.org/10.1021/acsanm.3c01272

グラファイトとは、炭素原子が網目のように六角形で結びついたシート状のグラフェンが積層した物質です。ダイヤモンド並みの強度を持ちながら、柔軟に折り曲げることが可能なだけでなく、高い電気伝導率と熱伝導率を示す材料として知られています。これらの特性から、リチウムイオン電池や太陽電池などの電極に応用されるなど、シリコンや貴金属の代替物質として注目されています。しかし、化学気相合成法などの既存の合成法では、高い処理温度と長い処理時間、高価な装置を必要とするため、結晶性や特性を制御したグラフェン/グラファイト材料を自在に作製できる簡便で安価な合成技術が求められています。

この解決に向け、本研究では炭素源となるエタノールなどの溶媒中に触媒金属(ニッケル鉄(NiFe)合金薄膜)を配置し、NiFe薄膜上へのレーザー照射による光加熱を利用した簡単なグラファイト合成方法の開発に成功しました。この方法では、レーザー照射によって局所的に加熱された触媒金属コートに接触したエタノールが熱分解され、触媒金属中に炭素原子が溶解し、冷却と共に表面に析出する際にグラファイトが合成されます。照射するレーザーパワーや時間を厳密に制御することにより、欠陥の少ない高品質なグラファイト粒子が合成され、また、電流電圧特性の評価からレーザー照射条件の最適化とともに導電性が向上することも確認出来ました。これらの結果から、レーザー照射位置にのみ選択的に、欠陥が少なく、高い導電性を示すグラファイト粒子を僅か数秒で合成できる新しい手法の開発に成功しました。この触媒金属薄膜上への選択的なグラファイト合成法は、高い導電性と優れた耐熱性を有するグラファイト回路や微小電極の描画に応用できる可能性があるだけでなく、NiFeなどの材料は触媒金属としてだけでなく、磁性体としても有用であることから、高感度磁気センサーや磁気メモリーデバイスへの応用も期待されます。

なお、本研究は、科学研究費助成事業基盤研究C、基盤研究B、および、天田財団の助成を受け行われました。