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掲載日:2026.03.03

電子情報工学科の船川大樹准教授と鈴木章斗教授(公立小松大学)、浅原啓輔特任助教(北海道大学)、関元樹氏の共著論文がPhysical Review A誌に掲載されました。

ランダムウォーク(酔歩)の量子版である「量子ウォーク」は、量子コンピュータに活用される探索アルゴリズムの構築や、トポロジカル絶縁体の性質の解明など、幅広い応用が期待されている重要な数理モデルです。このたび、船川准教授らは、これまで未解明だった一般的な「2次元量子ウォーク」の極限分布を解析的に導出することに成功しました。

■ ランダムウォークと量子ウォークの決定的な違い
一般的に、ランダムウォークを長時間繰り返すと、その分布は中心極限定理により「釣り鐘型」のガウス分布(正規分布)になることが知られています。また、その広がるスピードは「時間の平方根」に比例します。 一方、量子ウォークはランダムウォークよりも遥かに速く、「時間」そのものに比例して広がるという特異な性質を持ちます。2002年に今野紀雄客員教授(立命館大学)が1次元モデルにおける極限分布を計算した結果、ガウス分布とは全く異なる「逆釣り鐘型」の分布(1次元今野分布)になることが示され、これを契機に近年多くの研究が進められてきました。

■「2次元今野分布」を導出と今後の展望
2次元量子ウォークはこれまで、数値計算や一部の特殊なモデルに対してのみ研究されており、一般的な解析は極めて困難とされていました。中心極限定理とは異なり、量子ウォークではその複雑さゆえに、1次元分布から2次元分布の形を類推することが不可能だったためです。
本論文ではこの壁を打ち破り、広いクラスにおける2次元量子ウォークの確率密度関数(極限分布)を解析的に導出することに成功しました。さらに、この2次元分布の1次元への極限をとると、前述の「1次元今野分布」に完全に一致(収束)することも証明されました。このことから、今回導出された新たな分布はまさに「2次元今野分布」と呼ぶべきものです。本論文では、3次以上の多次元化に関する考察もなされており、今後の研究の進展が期待されます。

タイトル:Two-dimensional quantum central limit theorem by quantum walks
著者:Keisuke Asahara,Daiju Funakawa,Motoki Seki,Akito Suzuki
論文掲載ページ:https://journals.aps.org/pra/abstract/10.1103/fs8d-h2z8