ニュース電子情報工学科
掲載日:2025.12.01

電子情報工学科の前田秀基教授の論文がClassical and Quantum Gravity誌に掲載されました。
一般相対性理論において、ブラックホールはアインシュタイン方程式の解として実現する天体です。特によく知られているのは、軸対称で定常回転するブラックホールを記述するカー(Kerr)真空解です。このカー解は、回転しない極限で、静的かつ球対称なシュバルツシルド(Schwarzschild)解に帰着します。さらに、「定常なブラックホールの外部領域はカー解で記述される」というブラックホール唯一性定理が、物理的に妥当な条件の下で示されています。本論文では、外部が真のカー(シュバルツシルド)ブラックホールと完全に同一であるにもかかわらず、内部の時空構造が異なる「偽カー(シュバルツシルド)ブラックホール」という新しい配位を提唱しました。この偽のブラックホールは、真のブラックホールと全く同じ熱力学的性質と外部領域の力学的安定性を備えており、観測によって両者を区別することは原理的にできません。論文内ではさらに、このような興味深いブラックホールの配位は物質場に対する優勢エネルギー条件の下では実現不可能であるものの、弱いエネルギー条件や強いエネルギー条件の下では可能であることを示しました。
タイトル:Fake Schwarzschild and Kerr black holes
著者:Hideki Maeda
論文掲載ページ:https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6382/ae1e53



